@IDX:39800
@OFF:0xe7
@SPK:
@JPN:　………………。
@ENG:

@IDX:39801
@OFF:0x119
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:39802
@OFF:0x147
@SPK:
@JPN:　……。
@ENG:

@IDX:39803
@OFF:0x1cb
@SPK:
@JPN:　昨夜聞いたモノがどうしても耳から離れず、朝から　気分が重い。
@ENG:

@IDX:39804
@OFF:0x217
@SPK:
@JPN:　仕事が怖い……。
@ENG:

@IDX:39805
@OFF:0x237
@SPK:
@JPN:　死体ではなく仕事が、心の底から恐ろしく思える。　
@ENG:

@IDX:39806
@OFF:0x285
@SPK:
@JPN:　だがそれでも、身体は黙々と準備を進めていく。
@ENG:

@IDX:39807
@OFF:0x2c1
@SPK:
@JPN:　清潔なタオルをバッグに詰め、寝汗に濡れた下着を　着替え、汚れ物を洗濯籠に放り込む。
@ENG:

@IDX:39808
@OFF:0x323
@SPK:
@JPN:　頭よりも身体の方が、仕事から逃れられないことを　知っている……。
@ENG:

@IDX:39809
@OFF:0x373
@SPK:
@JPN:　改めて、自分が置かれている立場を思い知らされた　気がする。
@ENG:

@IDX:39810
@OFF:0x3cd
@SPK:
@JPN:　逃げられないのなら、覚悟を決めるしかない。
@ENG:

@IDX:39811
@OFF:0x407
@SPK:
@JPN:　ゆっくりと覚悟を決めながら、仕事に必要な荷物を　まとめていく。
@ENG:

@IDX:39812
@OFF:0x455
@SPK:
@JPN:　そうして全ての準備が終わると、いつもよりは早い　時間に部屋をあとにした……。
@ENG:

@IDX:39813
@OFF:0x595
@SPK:
@JPN:　まだ７時にもなっていない、朝のロビー……。
@ENG:

@IDX:39814
@OFF:0x5cf
@SPK:
@JPN:　だが、早朝特有の澄んだ空気の中にも一掴みほどの　喧噪が混じっている。
@ENG:

@IDX:39815
@OFF:0x623
@SPK:
@JPN:　看護婦や事務員が慌ただしく行き交い、軽い挨拶を　交わしながら通り過ぎていく。
@ENG:

@IDX:39816
@OFF:0x68f
@SPK:
@JPN:　僕もついこの間までは、その中にいた。
@ENG:

@IDX:39817
@OFF:0x6c3
@SPK:
@JPN:　１０日にも満たない期間が酷く長く思え、それだけ　以前の生活が懐かしく思い出される。
@ENG:

@IDX:39818
@OFF:0x725
@SPK:
@JPN:　あの中に、戻って行けるのだろうか？
@ENG:

@IDX:39819
@OFF:0x757
@SPK:
@JPN:　あの頃の自分に、戻れるのだろうか……。
@ENG:

@IDX:39821
@OFF:0x7e3
@SPK:［女の声］
@JPN:　……おはようございます。
@ENG:

@IDX:39825
@OFF:0x8b7
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ、御堂さん……おはようございます。
@ENG:

@IDX:39827
@OFF:0x922
@SPK:［悠紀］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:39830
@OFF:0x964
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……昨日の……。
@ENG:

@IDX:39832
@OFF:0x9bd
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……ええ。今日、仕事が終わった頃に電話します。ですから、今は仕事に行ってください。
@ENG:

@IDX:39835
@OFF:0xa47
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ……はい。
@ENG:

@IDX:39836
@OFF:0xa97
@SPK:
@JPN:　それだけ言い残すと御堂さんは逃げるように行って　しまった。
@ENG:

@IDX:39837
@OFF:0xae1
@SPK:
@JPN:　あたかも人の目を避けるように……。
@ENG:

@IDX:39838
@OFF:0xb23
@SPK:
@JPN:　彼女の知っている何かが……抱えている秘密がそう　させるのだろうか？
@ENG:

@IDX:39839
@OFF:0xb75
@SPK:
@JPN:　その『何か』を僕に語ってしまえば、彼女にとって　救いとなるのだろうか？
@ENG:

@IDX:39840
@OFF:0xbcb
@SPK:
@JPN:　『何か』を知ることは僕にとっては……。
@ENG:

@IDX:39841
@OFF:0xc11
@SPK:
@JPN:　……やめた。
@ENG:

@IDX:39842
@OFF:0xc2d
@SPK:
@JPN:　どちらにしろ、今夜御堂さんに会えば分かる。
@ENG:

@IDX:39843
@OFF:0xc67
@SPK:
@JPN:　今は自分のやるべきことをするしかない。
@ENG:

@IDX:39844
@OFF:0xc9d
@SPK:
@JPN:　不毛な思考の渦から抜け出して仕事に向かうことに　した。
@ENG:

@IDX:39846
@OFF:0xe67
@SPK:［真魚］
@JPN:　やほ！　じゃあ、ミーティングを……。
@ENG:

@IDX:39849
@OFF:0xec3
@SPK:[\protag]
@JPN:　お、お前なぁ……ノックしてすぐに入って来たらノックの意味がないだろうが……それとも、僕のパンツ目当ての確信犯か？
@ENG:

@IDX:39851
@OFF:0xffc
@SPK:［悠紀］
@JPN:　おはようございます。
@ENG:

@IDX:39854
@OFF:0x1048
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ！　おはようございます。
@ENG:

@IDX:39856
@OFF:0x111f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　今朝も早いですね……これから、お仕事ですか？
@ENG:

@IDX:39859
@OFF:0x1183
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、そうです。
@ENG:

@IDX:39860
@OFF:0x11c3
@SPK:
@JPN:　御堂さん……。
@ENG:

@IDX:39861
@OFF:0x11e1
@SPK:
@JPN:　僕の担当を個人的な理由で降りたと言っていた。
@ENG:

@IDX:39862
@OFF:0x121d
@SPK:
@JPN:　だが、僕に対する嫌悪からではないという。
@ENG:

@IDX:39863
@OFF:0x1255
@SPK:
@JPN:　では一体いかなる事情が彼女を担当から降ろしたの　だろうか？
@ENG:

@IDX:39864
@OFF:0x129f
@SPK:
@JPN:　担当を降りる直前と同じようなにこやかな表情で、　僕に挨拶をしてくる。
@ENG:

@IDX:39865
@OFF:0x12f3
@SPK:
@JPN:　それに対して僕もにこやかに挨拶を返す。
@ENG:

@IDX:39866
@OFF:0x133b
@SPK:
@JPN:　結局、何が変わったのだろうか？
@ENG:

@IDX:39867
@OFF:0x1369
@SPK:
@JPN:　こうしていると、別に担当であろうがなかろうが、　それほど変わらないような気がしてきた。
@ENG:

@IDX:39868
@OFF:0x13dd
@SPK:
@JPN:　だがお互いに挨拶を交わしてしまうと、それっきり　黙ってしまった。
@ENG:

@IDX:39869
@OFF:0x142d
@SPK:
@JPN:　これほどまで、共通の話題がないとは……。
@ENG:

@IDX:39870
@OFF:0x1465
@SPK:
@JPN:　１週間以上も毎日顔を合わせていて、考えてみれば　仕事以外で話した覚えがほとんどない。
@ENG:

@IDX:39871
@OFF:0x14c9
@SPK:
@JPN:　しかも今はその仕事の話ができないのだから……。　
@ENG:

@IDX:39873
@OFF:0x15c2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……あなたが考えていること、当ててみせましょうか？
@ENG:

@IDX:39876
@OFF:0x162c
@SPK:[\protag]
@JPN:　えっ？　……急に何を？
@ENG:

@IDX:39878
@OFF:0x1687
@SPK:［悠紀］
@JPN:　仕事の話ができないと話題がないなぁ……どうです？　ハズレですか？
@ENG:

@IDX:39881
@OFF:0x16ff
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、当たってます。でも、どうして分かったんですか？
@ENG:

@IDX:39883
@OFF:0x1778
@SPK:［悠紀］
@JPN:　私も同じこと考えてたんです。それで、あなたも多分そんな風に思っているんじゃないかなって……。
@ENG:

@IDX:39886
@OFF:0x180c
@SPK:[\protag]
@JPN:　僕が御堂さんと同じことを？　でも、どうしてそう思ったんですか？
@ENG:

@IDX:39888
@OFF:0x188f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　担当をしていて、あなたの性格は把握できましたから……。
@ENG:

@IDX:39891
@OFF:0x18fd
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:39893
@OFF:0x19c2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あの、何か？
@ENG:

@IDX:39896
@OFF:0x1a06
@SPK:[\protag]
@JPN:　い、いえ。たった１週間でそんなことまで分かるなんてすごいなって思って……真魚も頑張ってるけど、そこまでは……。
@ENG:

@IDX:39898
@OFF:0x1b2f
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そんな、すごいことなんてありませんよ……。
@ENG:

@IDX:39901
@OFF:0x1b91
@SPK:[\protag]
@JPN:　ん？
@ENG:

@IDX:39903
@OFF:0x1c50
@SPK:［悠紀］
@JPN:　え？　どうかされましたか？
@ENG:

@IDX:39906
@OFF:0x1ca2
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、その……ちょっと思ったんですけど……。
@ENG:

@IDX:39908
@OFF:0x1d13
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ええ……。
@ENG:

@IDX:39911
@OFF:0x1d55
@SPK:[\protag]
@JPN:　１週間で性格を把握されちゃうってことは……よくよく考えてみたら僕がそれだけ単純な人間だってことですよね？
@ENG:

@IDX:39913
@OFF:0x1e02
@SPK:［悠紀］
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:39916
@OFF:0x1e3e
@SPK:[\protag]
@JPN:　はあ……そうじゃないかとは自分でも薄々気づいてましたけど……改めて言われると、なんか落ち込むな……。
@ENG:

@IDX:39918
@OFF:0x1f61
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ち、違いますよ、そんな意味じゃありません。
@ENG:

@IDX:39921
@OFF:0x1fc3
@SPK:[\protag]
@JPN:　はは、ははははは。いいんですよ、慰めてくれなくても……。どうせ僕なんてその程度の人間ですから……ははははは……。
@ENG:

@IDX:39923
@OFF:0x20f2
@SPK:［悠紀］
@JPN:　ど、どうしよう……あなたを傷つけるつもりなんてなかったんです。それなのに……。
@ENG:

@IDX:39927
@OFF:0x219c
@SPK:[\protag]
@JPN:ん？
@ENG:

@IDX:39929
@OFF:0x2259
@SPK:［悠紀］
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:39932
@OFF:0x2295
@SPK:[\protag]
@JPN:　いま、傷つけるつもりはなかったって言いました？
@ENG:

@IDX:39934
@OFF:0x2308
@SPK:［悠紀］
@JPN:　え、ええ。
@ENG:

@IDX:39937
@OFF:0x234a
@SPK:[\protag]
@JPN:　……ってことは、僕がどういう反応するか読めなかったんですよね？
@ENG:

@IDX:39939
@OFF:0x2443
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そ、そんなの当たり前じゃないですか！？　人がどう反応するかなんて、分かるわけないじゃありませんか。
@ENG:

@IDX:39942
@OFF:0x24dd
@SPK:[\protag]
@JPN:　でも、さっきは僕の性格を把握したって……。
@ENG:

@IDX:39944
@OFF:0x254c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あ、あれはあくまで一般論としてってことです。他人のことを全て見通せる人なんているわけないでしょう？
@ENG:

@IDX:39947
@OFF:0x25e6
@SPK:[\protag]
@JPN:　そ、そうですよね。人間の性格なんてそう簡単には把握できませんよね。
@ENG:

@IDX:39949
@OFF:0x26e3
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そうですよ。ですから、別にあなたが単純な人間ってことではないんですよ。
@ENG:

@IDX:39952
@OFF:0x2761
@SPK:[\protag]
@JPN:　なんだ。ヘコんで損しちゃったな。
@ENG:

@IDX:39954
@OFF:0x283c
@SPK:［悠紀］
@JPN:　クスクスクス。私もどうしようかと思っちゃいました。お話がどんどん変な方向に行っちゃうから。
@ENG:

@IDX:39957
@OFF:0x28ce
@SPK:[\protag]
@JPN:　まるで、真魚と話してるみたいに？
@ENG:

@IDX:39959
@OFF:0x29a9
@SPK:［悠紀］
@JPN:　そう言えばそうですね。あの子も言葉の端っこから、どんどん違う方向に行っちゃうことがありますからね。
@ENG:

@IDX:39962
@OFF:0x2a43
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、あいつと話してると脱線ばっかりなんですよね。いい子なんですけど、そこだけは担当としてどうかって思いますよ。
@ENG:

@IDX:39964
@OFF:0x2b6e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　あら？　今、真魚ちゃんのことを『いい子』って言いませんでしたか？
@ENG:

@IDX:39967
@OFF:0x2be6
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、言いましたけど……それが何か？
@ENG:

@IDX:39969
@OFF:0x2cc5
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……彼女、あなたよりも年上なんですよ？　ですから、いい子って言い方はちょっと……。
@ENG:

@IDX:39972
@OFF:0x2d4f
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、知ってます。でも、何だか……。
@ENG:

@IDX:39974
@OFF:0x2e2e
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……外見のせいですか？
@ENG:

@IDX:39977
@OFF:0x2e7c
@SPK:[\protag]
@JPN:　それもあるかもしれませんけど、それよりも性格のせいだと思います。真魚って、人懐っこいじゃないですか？　それで……。
@ENG:

@IDX:39979
@OFF:0x2fa9
@SPK:［悠紀］
@JPN:　……言われてみれば、そんな感じしますね。
@ENG:

@IDX:39982
@OFF:0x3009
@SPK:[\protag]
@JPN:　でしょ？　もっとも、当人の前では言いませんけどね。
@ENG:

@IDX:39984
@OFF:0x30f6
@SPK:［悠紀］
@JPN:　クスッ、そうですね……
@ENG:

@IDX:39985
@OFF:0x31a0
@SPK:
@JPN:あっ、いつの間にかこんな時間に……ごめんなさい、私これで……。
@ENG:

@IDX:39988
@OFF:0x3214
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい……じゃあ、また。
@ENG:

@IDX:39989
@OFF:0x326e
@SPK:
@JPN:　共通の話題がないと思ったが、一つあった。
@ENG:

@IDX:39990
@OFF:0x32a6
@SPK:
@JPN:　真魚のことだ。
@ENG:

@IDX:39991
@OFF:0x32c4
@SPK:
@JPN:　仕事の暗い空気がない分、前より気楽に話せた。
@ENG:

@IDX:39992
@OFF:0x3300
@SPK:
@JPN:　これならば、以前の真魚と同じように、仕事と関係　のない友人として普通につき合っていけるかもしれ　ない。
@ENG:

@IDX:39994
@OFF:0x3433
@SPK:［真魚］
@JPN:　あれ？　まだこんなトコにいたの？
@ENG:

@IDX:39997
@OFF:0x348b
@SPK:[\protag]
@JPN:　あん？　何だ真魚、仕事中か？
@ENG:

@IDX:39999
@OFF:0x3562
@SPK:［真魚］
@JPN:　まあ、仕事中といえば仕事中かな……。
@ENG:

@IDX:40002
@OFF:0x35be
@SPK:[\protag]
@JPN:　なんだ。ずいぶん曖昧な言い方だな。
@ENG:

@IDX:40004
@OFF:0x3625
@SPK:［真魚］
@JPN:　看護婦の正規の業務じゃないから。
@ENG:

@IDX:40007
@OFF:0x367d
@SPK:[\protag]
@JPN:　正規の業務じゃない？　どういうことだ。
@ENG:

@IDX:40009
@OFF:0x36e8
@SPK:［真魚］
@JPN:　だって、これから地下に行くところだったんだよ？
@ENG:

@IDX:40013
@OFF:0x3792
@SPK:[\protag]
@JPN:あれ？
@ENG:

@IDX:40015
@OFF:0x3851
@SPK:［真魚］
@JPN:　何ビックリしてるの？
@ENG:

@IDX:40018
@OFF:0x389d
@SPK:[\protag]
@JPN:　……僕がここに来たの、７時前だったんだけど……。
@ENG:

@IDX:40020
@OFF:0x3988
@SPK:［真魚］
@JPN:　何言ってんの……もう７時半過ぎてるよ？
@ENG:

@IDX:40023
@OFF:0x39e6
@SPK:[\protag]
@JPN:　……みたいだね。
@ENG:

@IDX:40025
@OFF:0x3ab1
@SPK:［真魚］
@JPN:　『みたいだね』じゃなくて……さっさと準備しちゃってよ！　じゃないと、ミーティングできないよ？
@ENG:

@IDX:40028
@OFF:0x3b45
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かった……真魚はどうする？
@ENG:

@IDX:40030
@OFF:0x3c1c
@SPK:［真魚］
@JPN:　んー……ちょっとここで休んでから、ゆっくり行くよ。３分でいいかな？
@ENG:

@IDX:40033
@OFF:0x3c96
@SPK:[\protag]
@JPN:　３分か……ちょっときついな。でも、急げば何とか……。
@ENG:

@IDX:40035
@OFF:0x3d0f
@SPK:［真魚］
@JPN:　そう？　じゃあ、急いでね。あと、２分４０秒……。
@ENG:

@IDX:40038
@OFF:0x3d77
@SPK:[\protag]
@JPN:　あわわ。分かった、すぐに着替えるよ。
@ENG:

@IDX:40039
@OFF:0x3e78
@SPK:
@JPN:　慌てて更衣室に駆け込み、大急ぎで着替える。
@ENG:

@IDX:40040
@OFF:0x3eb2
@SPK:
@JPN:　真魚がどうこうというより、時間がない。
@ENG:

@IDX:40041
@OFF:0x3ee8
@SPK:
@JPN:　昨日ミーティングにかかった時間は２０分……。
@ENG:

@IDX:40042
@OFF:0x3f24
@SPK:
@JPN:　それを考えると、今でも充分に遅刻だ。
@ENG:

@IDX:40044
@OFF:0x3faf
@SPK:［真魚］
@JPN:　３分経過ぁー！　約束通り、入るからねぇー！
@ENG:

@IDX:40047
@OFF:0x4011
@SPK:[\protag]
@JPN:　はやっ！？　ちょっと待て！　まだパンツのまま……。
@ENG:

@IDX:40049
@OFF:0x4118
@SPK:［真魚］
@JPN:　ぶっぶー！　ターイムオーバー！
@ENG:

@IDX:40052
@OFF:0x416e
@SPK:[\protag]
@JPN:　お、お前なぁ……まだだって言っただろ。僕のパンツ姿なんかそんなに見たいのか？
@ENG:

@IDX:40054
@OFF:0x4279
@SPK:［真魚］
@JPN:　へへへ……良いではないか、良いではないか！
@ENG:

@IDX:40057
@OFF:0x42db
@SPK:[\protag]
@JPN:　ふう……悪代官じゃないんだから……。
@ENG:

@IDX:40059
@OFF:0x4344
@SPK:［真魚］
@JPN:　ほーれ、ほーれ。
@ENG:

@IDX:40062
@OFF:0x438c
@SPK:[\protag]
@JPN:　ほら、着替え終わったからミーティング始めてくれ。
@ENG:

@IDX:40064
@OFF:0x4477
@SPK:［真魚］
@JPN:　らじゃ！　了解であります！
@ENG:

@IDX:40065
@OFF:0x44c3
@SPK:
@JPN:　担当者が僕を疲れさせて、どうするつもりだ？
@ENG:

@IDX:40066
@OFF:0x44fd
@SPK:
@JPN:　僕の負担を軽くするための担当ではないのか？
@ENG:

@IDX:40067
@OFF:0x4537
@SPK:
@JPN:　それが逆に負担を増加させるなど、もう本末転倒と　言うしかない。
@ENG:

@IDX:40068
@OFF:0x4585
@SPK:
@JPN:　だが、下手に注意して萎縮されても、それはそれで　困るのだが……。
@ENG:

@IDX:40070
@OFF:0x468e
@SPK:［真魚］
@JPN:　でねでね、聞いてよぉ……
@ENG:

@IDX:40071
@OFF:0x473a
@SPK:
@JPN:って、聞いてるの！？
@ENG:

@IDX:40074
@OFF:0x4784
@SPK:[\protag]
@JPN:　ん？　ああ、聞いてるって。今日は女性が１体、傷はない……だったな？
@ENG:

@IDX:40076
@OFF:0x4881
@SPK:［真魚］
@JPN:　それだけ？　もっとイッパイ話したじゃん！
@ENG:

@IDX:40079
@OFF:0x48e1
@SPK:[\protag]
@JPN:　あのなぁ……ミーティングは、世間話と違うんだぞ？　昨日も言ったけど、必要なことを手短に……。そのぐらい、御堂さんに教わらなかったのか？
@ENG:

@IDX:40081
@OFF:0x4a22
@SPK:［真魚］
@JPN:　残念でした、そんなこと教わってないよ！　だって、引き継ぎなんかしてないもん。
@ENG:

@IDX:40084
@OFF:0x4aa6
@SPK:[\protag]
@JPN:　……だったら、いま覚えてくれ。ミーティング一つでこんなに時間かけてたら、それだけ仕事の開始が遅くなる。
@ENG:

@IDX:40086
@OFF:0x4bc7
@SPK:［真魚］
@JPN:　何よ、ケチ！　ちょっとくらい話につき合ってくれたっていいじゃん！
@ENG:

@IDX:40089
@OFF:0x4c3f
@SPK:[\protag]
@JPN:　仕事が終わったら、いくらでもつき合うから。だから開始前のミーティングでは……な？
@ENG:

@IDX:40091
@OFF:0x4cd4
@SPK:［真魚］
@JPN:　むぅ……
@ENG:

@IDX:40092
@OFF:0x4d70
@SPK:
@JPN:しょうがないなぁ……。
@ENG:

@IDX:40095
@OFF:0x4dbc
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かってくれて、ありがとな。じゃあ、作業に移るから……。
@ENG:

@IDX:40097
@OFF:0x4eaf
@SPK:［真魚］
@JPN:　頑張ってね！　そうそう、今日は健康診断があるからあんまり遅くなんないでよ！
@ENG:

@IDX:40098
@OFF:0x4f2d
@SPK:
@JPN:　だったら、ミーティングにこんなに時間をかけない　でくれ……。
@ENG:

@IDX:40099
@OFF:0x4f79
@SPK:
@JPN:　言いかけた言葉を呑み込み、代わりに軽く頷くと、　そのまま更衣室をあとにした……。
@ENG:

@IDX:40100
@OFF:0x5157
@SPK:
@JPN:　ドアを開けた途端、異様な空気が鼻を直撃した。
@ENG:

@IDX:40101
@OFF:0x5193
@SPK:
@JPN:　チョコレートのように甘ったるい、それでいて少し　カビっぽいにおい……。
@ENG:

@IDX:40102
@OFF:0x51e9
@SPK:
@JPN:　それがどこからともなく流れ込み、部屋に充満して　いる。
@ENG:

@IDX:40103
@OFF:0x523d
@SPK:
@JPN:　不思議なにおい……。
@ENG:

@IDX:40104
@OFF:0x5261
@SPK:
@JPN:　異臭と呼んで差し支えないほどのものでありながら　嗅いでいても苦にならない。
@ENG:

@IDX:40105
@OFF:0x52bb
@SPK:
@JPN:　それどころか……多幸感とでも言おうか？
@ENG:

@IDX:40106
@OFF:0x52f1
@SPK:
@JPN:　……ただボーッとにおいを嗅いでいるだけで、幸せ　な気持ちになっていく。
@ENG:

@IDX:40107
@OFF:0x5357
@SPK:
@JPN:　……このにおいは何だ？
@ENG:

@IDX:40108
@OFF:0x537d
@SPK:
@JPN:　……なぜこんなにおいが、ここに？
@ENG:

@IDX:40109
@OFF:0x53ad
@SPK:
@JPN:　そうだ……換気扇は……？
@ENG:

@IDX:40110
@OFF:0x53d5
@SPK:
@JPN:　空調設備の故障かと思って目を向ければ、換気扇は　微かな音を立てながら確かに動いている。
@ENG:

@IDX:40111
@OFF:0x544b
@SPK:
@JPN:　……音？
@ENG:

@IDX:40112
@OFF:0x5463
@SPK:
@JPN:　ここの空調は、普段は音などさせない。
@ENG:

@IDX:40113
@OFF:0x5497
@SPK:
@JPN:　だが今日は、低い唸り声を立てている。
@ENG:

@IDX:40114
@OFF:0x54cb
@SPK:
@JPN:　においとは逆に、酷く神経を逆撫でする音を……。　
@ENG:

@IDX:40115
@OFF:0x5519
@SPK:
@JPN:　変だ、おかしい……。
@ENG:

@IDX:40116
@OFF:0x553d
@SPK:
@JPN:　そう思いながらも身体は勝手に動き、準備を進めて　いく。
@ENG:

@IDX:40117
@OFF:0x5583
@SPK:
@JPN:　床の水洗いを済ませ、道具を部屋の中央まで運び、　引き上げに使う棒を持ってプールに近づく。
@ENG:

@IDX:40118
@OFF:0x55eb
@SPK:
@JPN:　そこまでの動作を、全く意識することもなくやって　のける。
@ENG:

@IDX:40119
@OFF:0x5643
@SPK:
@JPN:　音だのにおいだのを気にするのは、洗い終えてから　でいい……。
@ENG:

@IDX:40120
@OFF:0x568f
@SPK:
@JPN:　失敗しないように……。
@ENG:

@IDX:40121
@OFF:0x56b5
@SPK:
@JPN:　ただそれだけに気をつけて……。
@ENG:

@IDX:40122
@OFF:0x579e
@SPK:
@JPN:　仕事は、もうほとんど終わったと言ってもいい。
@ENG:

@IDX:40123
@OFF:0x57da
@SPK:
@JPN:　前は洗い終え、残すは背中だけ……。
@ENG:

@IDX:40124
@OFF:0x580c
@SPK:
@JPN:　足下には、うつ伏せの死体が横たわっている。
@ENG:

@IDX:40125
@OFF:0x5856
@SPK:
@JPN:　もうすぐ仕事が終わる……。
@ENG:

@IDX:40126
@OFF:0x5880
@SPK:
@JPN:　そうすれば、ここから出られる……。
@ENG:

@IDX:40127
@OFF:0x58b2
@SPK:
@JPN:　死体なんぞと、二人きりでいなくても済む……。
@ENG:

@IDX:40128
@OFF:0x58ee
@SPK:
@JPN:　だが普段なら嬉々として作業を進めるのに、今日は　何だか勿体ない気がする。
@ENG:

@IDX:40129
@OFF:0x5954
@SPK:
@JPN:　……死体が美人だから？
@ENG:

@IDX:40130
@OFF:0x597a
@SPK:
@JPN:　否、はっきり言って趣味じゃない。
@ENG:

@IDX:40131
@OFF:0x59aa
@SPK:
@JPN:　……ではなぜ、僕は興奮している？
@ENG:

@IDX:40132
@OFF:0x59da
@SPK:
@JPN:　息が乱れ、固いゴムのツナギが見て分かるほど盛り　上がっている。
@ENG:

@IDX:40133
@OFF:0x5a28
@SPK:
@JPN:　否定しようもない……僕は死体に欲情している。
@ENG:

@IDX:40134
@OFF:0x5a72
@SPK:
@JPN:　だが、なぜこんなものに？
@ENG:

@IDX:40135
@OFF:0x5a9a
@SPK:
@JPN:　こう言っては失礼だが、はっきり言って昨夜の方が　マシだった。
@ENG:

@IDX:40136
@OFF:0x5ae6
@SPK:
@JPN:　スタイルも顔も、遥かに上。
@ENG:

@IDX:40137
@OFF:0x5b10
@SPK:
@JPN:　この死体に興奮するなら、昨夜は襲ってもおかしく　なかっただろう。
@ENG:

@IDX:40138
@OFF:0x5b60
@SPK:
@JPN:　……狂ってしまったのだろうか？
@ENG:

@IDX:40139
@OFF:0x5c12
@SPK:
@JPN:　どうしても、視線が死体の尻に吸い寄せられる。
@ENG:

@IDX:40140
@OFF:0x5c4e
@SPK:
@JPN:　ムッチリと脂肪の乗った尻に……。
@ENG:

@IDX:40141
@OFF:0x5c7e
@SPK:
@JPN:　緩く開いた太ももの間にある女性器に……。
@ENG:

@IDX:40142
@OFF:0x5cb6
@SPK:
@JPN:　最大限に自制しなければ何をしでかすか分からない　ほど、淫らな想像が頭の中を駆け巡る。
@ENG:

@IDX:40143
@OFF:0x5d2a
@SPK:
@JPN:　そして長引けば長引くほど身体は僕の意思を離れ、　淫らな想像を禁断の現実へ移そうとする。
@ENG:

@IDX:40144
@OFF:0x5d90
@SPK:
@JPN:　そして頭も、止めようとしなくなっていく。
@ENG:

@IDX:40145
@OFF:0x5dc8
@SPK:
@JPN:　ヤメロ……ヤメロ……。
@ENG:

@IDX:40146
@OFF:0x5dee
@SPK:
@JPN:　理性の一部が、しきりに危険信号を発している。
@ENG:

@IDX:40159
@OFF:0x5fac
@SPK:　ヤメロ……
@JPN:ロ……。
@ENG:

@IDX:40160
@OFF:0x6081
@SPK:
@JPN:　気がつくと最後の水洗いも終わり、足下には死体が　仰向けに横たわっていた。
@ENG:

@IDX:40161
@OFF:0x60d9
@SPK:
@JPN:　ホルマリンの代わりに、水に濡れた死体……。
@ENG:

@IDX:40162
@OFF:0x6113
@SPK:
@JPN:　鏑木さんへの連絡も済ませた、あとは彼が来るまで　待って確認してもらうだけだ……。
@ENG:

@IDX:40163
@OFF:0x61e0
@SPK:
@JPN:　……突然明かりが落ちた。
@ENG:

@IDX:40164
@OFF:0x6208
@SPK:
@JPN:　一条の光すらも存在しない、絶対の闇……。
@ENG:

@IDX:40165
@OFF:0x6240
@SPK:
@JPN:　ここがどこかも分からなくなるほど、何も見えない　空間。
@ENG:

@IDX:40166
@OFF:0x6286
@SPK:
@JPN:　仕事前から続く耳障りな音と、まだ残っている甘い　におい……。
@ENG:

@IDX:40167
@OFF:0x62d2
@SPK:
@JPN:　この２つがなければ、部屋が変わったのかと思った　だろう。
@ENG:

@IDX:40168
@OFF:0x6330
@SPK:
@JPN:　……その音も、たった今止んだ。
@ENG:

@IDX:40169
@OFF:0x635e
@SPK:
@JPN:　これでもう、何も聞こえてこない。
@ENG:

@IDX:40170
@OFF:0x638e
@SPK:
@JPN:　耳が全ての役割を放棄したように平衡感覚が失せ、　立っていることも難しい。
@ENG:

@IDX:40171
@OFF:0x640c
@SPK:
@JPN:　突然、部屋に水滴の落ちる音が響いた。
@ENG:

@IDX:40172
@OFF:0x6440
@SPK:
@JPN:　ほんの一滴、液体が落ちただけの音……。
@ENG:

@IDX:40173
@OFF:0x6476
@SPK:
@JPN:　だが、無音に晒されていた僕の耳には、異様なほど　大きく響いた。
@ENG:

@IDX:40174
@OFF:0x64c4
@SPK:
@JPN:　咄嗟に音の聞こえた方を振り向いてしまう。
@ENG:

@IDX:40175
@OFF:0x650c
@SPK:
@JPN:　……それは、完全な失敗だった。
@ENG:

@IDX:40176
@OFF:0x653a
@SPK:
@JPN:　足場も確認できず、自分がどんな体勢でいるかすら　分からない闇……。
@ENG:

@IDX:40177
@OFF:0x658c
@SPK:
@JPN:　立っていることさえ難しい闇の中で、身体を捻れば　どうなるか……。
@ENG:

@IDX:40178
@OFF:0x65ec
@SPK:
@JPN:　一瞬、床の感覚が消え失せた。
@ENG:

@IDX:40179
@OFF:0x6618
@SPK:
@JPN:　全身を包む浮遊感に、転んだことを自覚する。
@ENG:

@IDX:40180
@OFF:0x6652
@SPK:
@JPN:　どちらに転んだのか、分からない……。
@ENG:

@IDX:40181
@OFF:0x6686
@SPK:
@JPN:　だがそれでも、咄嗟に身体を支えようとする。
@ENG:

@IDX:40182
@OFF:0x66d4
@SPK:
@JPN:　人は飛ぶことはできない。
@ENG:

@IDX:40183
@OFF:0x66fc
@SPK:
@JPN:　地面がある限り、落ち続けることもできない。
@ENG:

@IDX:40187
@OFF:0x67ca
@SPK:[\protag]
@JPN:　激しい衝撃と共に、柔らかい感触が僕の身体を受け　止めた。
@ENG:

@IDX:40188
@OFF:0x6812
@SPK:
@JPN:　固い骨組みの上に、柔らかい塊が二つ……。
@ENG:

@IDX:40189
@OFF:0x684a
@SPK:
@JPN:　触れた頬に、濡れて冷たくなった感触が伝わる。
@ENG:

@IDX:40190
@OFF:0x6894
@SPK:
@JPN:　決して床ではあり得ない……。
@ENG:

@IDX:40191
@OFF:0x68c0
@SPK:
@JPN:　かといって、掃除用具のいずれでもない……。
@ENG:

@IDX:40192
@OFF:0x68fa
@SPK:
@JPN:　……外側の柔らかさと、内側の固さ。
@ENG:

@IDX:40193
@OFF:0x692c
@SPK:
@JPN:　それらを兼ね備えたものは、僕自身の身体を除いて　この部屋には一つしかない。
@ENG:

@IDX:40194
@OFF:0x6986
@SPK:
@JPN:　それは……。
@ENG:

@IDX:40195
@OFF:0x6a99
@SPK:
@JPN:　　　　　　　　……これだ。
@ENG:

@IDX:40196
@OFF:0x6adb
@SPK:
@JPN:　部屋が闇に閉ざされるまで、僕が洗っていたもの。　……つまり死体。
@ENG:

@IDX:40197
@OFF:0x6b2b
@SPK:
@JPN:　そっと閉じられた瞼、ゆったりと開かれた唇。
@ENG:

@IDX:40198
@OFF:0x6b65
@SPK:
@JPN:　安らかな眠りにつく女性の顔が、目の前にある。
@ENG:

@IDX:40199
@OFF:0x6baf
@SPK:
@JPN:　互いの顔は、息がかかるほどに近い。
@ENG:

@IDX:40200
@OFF:0x6be1
@SPK:
@JPN:　だが瞬時に、それは決してあり得ないということに　気づく。
@ENG:

@IDX:40201
@OFF:0x6c29
@SPK:
@JPN:　目の前にあるのは、もはや呼吸などしない死体なの　だから……。
@ENG:

@IDX:40202
@OFF:0x6c75
@SPK:
@JPN:　死体の胸に顔を埋めた……その事実を、興奮と緊張　の中で認識する。
@ENG:

@IDX:40203
@OFF:0x6dc6
@SPK:
@JPN:　直後、肉棒の先端から熱い粘液が吐き出された。
@ENG:

@IDX:40204
@OFF:0x6e02
@SPK:
@JPN:　ビクビクと腰が震えるたびに下着が濡れていく。
@ENG:

@IDX:40205
@OFF:0x6e3e
@SPK:
@JPN:　快感もなにもない……。
@ENG:

@IDX:40206
@OFF:0x6e64
@SPK:
@JPN:　ただ股間の濡れていく不快感だけが、少しずつ強く　なっていく。
@ENG:

@IDX:40207
@OFF:0x6ec0
@SPK:
@JPN:　射精している……そのことに気がついたのは、最後　の腰の震えが止まってからだった。
@ENG:

@IDX:40208
@OFF:0x6f20
@SPK:
@JPN:　ねっとりと太ももを伝わる精液の感触で、無理やり　我に返される。
@ENG:

@IDX:40209
@OFF:0x6fe2
@SPK:
@JPN:　ほとんど跳ねるように死体の上から飛び起きると、　一気にドアのそばへ駆け寄った。
@ENG:

@IDX:40210
@OFF:0x7040
@SPK:
@JPN:　垂れた精液がゴムのツナギと絡み、ニチャニチャと　した感触を太ももに与える。
@ENG:

@IDX:40211
@OFF:0x709a
@SPK:
@JPN:　自分の精液だということは分かっているが、この上　なく穢れたもののように感じられる。
@ENG:

@IDX:40212
@OFF:0x70fc
@SPK:
@JPN:　なぜだ？　あんなので射精してしまったからか？
@ENG:

@IDX:40213
@OFF:0x7138
@SPK:
@JPN:　横の壁に頭をつけ、荒い呼吸を繰り返す。
@ENG:

@IDX:40214
@OFF:0x7186
@SPK:
@JPN:　違う……
@ENG:

@IDX:40215
@OFF:0x71a8
@SPK:
@JPN:違う……
@ENG:

@IDX:40216
@OFF:0x71c8
@SPK:
@JPN:違う……
@ENG:

@IDX:40217
@OFF:0x71e8
@SPK:
@JPN:違う……。
@ENG:

@IDX:40218
@OFF:0x720a
@SPK:
@JPN:　あれは事故だ……。
@ENG:

@IDX:40219
@OFF:0x722c
@SPK:
@JPN:　狙ったわけではない……。
@ENG:

@IDX:40220
@OFF:0x7254
@SPK:
@JPN:　あれは事故なんだ……。
@ENG:

@IDX:40221
@OFF:0x728c
@SPK:
@JPN:　そうして、否定しなければ……。
@ENG:

@IDX:40222
@OFF:0x72ba
@SPK:
@JPN:　何度も否定しなければ、心の安定が保てない。
@ENG:

@IDX:40223
@OFF:0x72f4
@SPK:
@JPN:　壁に頭を打ちつけ、否定の言葉を呟き続ける。
@ENG:

@IDX:40224
@OFF:0x734a
@SPK:
@JPN:　違う……
@ENG:

@IDX:40225
@OFF:0x736c
@SPK:
@JPN:違う……
@ENG:

@IDX:40226
@OFF:0x738c
@SPK:
@JPN:違う……
@ENG:

@IDX:40227
@OFF:0x73ac
@SPK:
@JPN:違う……。
@ENG:

@IDX:40228
@OFF:0x73e0
@SPK:
@JPN:　何度も、何度も、否定し続ける……。
@ENG:

@IDX:40229
@OFF:0x7412
@SPK:
@JPN:　額から流れ出る液体が、頬を濡らしていくのを感じ　ながら……。
@ENG:

@IDX:40230
@OFF:0x745e
@SPK:
@JPN:　何度も、何度も、何度も、何度も…………。
@ENG:

@IDX:40231
@OFF:0x74b2
@SPK:
@JPN:　違う……
@ENG:

@IDX:40232
@OFF:0x74d4
@SPK:
@JPN:違……う……
@ENG:

@IDX:40233
@OFF:0x74f8
@SPK:
@JPN:ち……が……
@ENG:

@IDX:40234
@OFF:0x751c
@SPK:
@JPN:う…………。
@ENG:

@IDX:40236
@OFF:0x75f6
@SPK:［男の声］
@JPN:　おい、どうした！　しっかりしろ、おい！
@ENG:

@IDX:40239
@OFF:0x7654
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40241
@OFF:0x76a5
@SPK:［男の声］
@JPN:　どうした？　何かあったのか？　おい！
@ENG:

@IDX:40244
@OFF:0x7701
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40246
@OFF:0x7752
@SPK:［男の声］
@JPN:　おい、返事をしろ！
@ENG:

@IDX:40249
@OFF:0x779c
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ……あああ……。
@ENG:

@IDX:40250
@OFF:0x78a0
@SPK:
@JPN:　突然壁から引き剥がされ、激しく揺さぶられた。
@ENG:

@IDX:40251
@OFF:0x78dc
@SPK:
@JPN:　気がつくと、目の前に見慣れた顔がある。
@ENG:

@IDX:40253
@OFF:0x795b
@SPK:［鏑木］
@JPN:　良かった、気がついたか……何があったんだ？
@ENG:

@IDX:40256
@OFF:0x79bd
@SPK:[\protag]
@JPN:　明かりが消えて……音とにおいが……僕、興奮して……。
@ENG:

@IDX:40258
@OFF:0x7a36
@SPK:［鏑木］
@JPN:　何だって？　おい、もっと分かるように説明しろ！
@ENG:

@IDX:40261
@OFF:0x7a9c
@SPK:[\protag]
@JPN:　だから、急に部屋が暗くなって……その前に、変な音とにおいが……。
@ENG:

@IDX:40263
@OFF:0x7b21
@SPK:［鏑木］
@JPN:　ちょっと待て。部屋が暗くなったって……誰かが照明を切ったとでも言うのか？
@ENG:

@IDX:40266
@OFF:0x7ba1
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かり……ません。僕にも、何が何だか……。
@ENG:

@IDX:40268
@OFF:0x7c10
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もういい……分かったから、確認作業が終わるまで、そこで少し休んでいろ。
@ENG:

@IDX:40269
@OFF:0x7c98
@SPK:
@JPN:　そう吐き捨てると、彼は確認作業を始めた。
@ENG:

@IDX:40270
@OFF:0x7cd0
@SPK:
@JPN:　時折呆然と佇む僕に視線を送っては、疲れたような　ため息をついてみせる。
@ENG:

@IDX:40271
@OFF:0x7d26
@SPK:
@JPN:　その視線には同情と哀れみ……それにほんの少し、　理解しがたいものを見た恐怖が浮かんでいる。
@ENG:

@IDX:40273
@OFF:0x7e3f
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……終わったぞ。どうだ、少しは落ち着いたか？
@ENG:

@IDX:40276
@OFF:0x7ea3
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい……。
@ENG:

@IDX:40278
@OFF:0x7ef6
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そうか……じゃあ聞くが、何があったんだ？
@ENG:

@IDX:40281
@OFF:0x7f56
@SPK:[\protag]
@JPN:　すみません……僕にも、よく分からないんです……変な音と、それににおいがして、気がついたら死体に欲情してて……。
@ENG:

@IDX:40283
@OFF:0x8083
@SPK:［鏑木］
@JPN:　死体に欲情した？　……一応念のために聞くが、本当に欲情しただけか？
@ENG:

@IDX:40287
@OFF:0x813d
@SPK:[\protag]
@JPN:　あっ……す、すみません。急に怒鳴ったりして……。
@ENG:

@IDX:40289
@OFF:0x81b2
@SPK:［鏑木］
@JPN:　いや、こちらこそ疑ってすまない……確かに、確認では何もなかったよ。
@ENG:

@IDX:40291
@OFF:0x8239
@SPK:［鏑木］
@JPN:　……で、それだけの理由で落ち込んでたのか？
@ENG:

@IDX:40294
@OFF:0x829b
@SPK:[\protag]
@JPN:　……鏑木さんを待ってたら、急に部屋の明かりが消えて……。
@ENG:

@IDX:40296
@OFF:0x8318
@SPK:［鏑木］
@JPN:　そう言えば、そんなことを言ってたな……本当なのか？
@ENG:

@IDX:40299
@OFF:0x8382
@SPK:[\protag]
@JPN:　ええ、本当です……それで、バランスを崩してしまって……。
@ENG:

@IDX:40301
@OFF:0x83ff
@SPK:［鏑木］
@JPN:　じゃあ、額の傷はその時に？
@ENG:

@IDX:40304
@OFF:0x8451
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40306
@OFF:0x84a0
@SPK:［鏑木］
@JPN:　まあ、大体は分かったよ……軽い脳震盪だろう。休めばすぐに治るさ。
@ENG:

@IDX:40308
@OFF:0x8525
@SPK:［鏑木］
@JPN:　もう戻るといい……おっと！　寝る前に、傷の手当てを忘れるなよ？
@ENG:

@IDX:40311
@OFF:0x859b
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……それでは失礼します。
@ENG:

@IDX:40312
@OFF:0x85f7
@SPK:
@JPN:　死体の側に戻った鏑木さんを見ながら、一人密かに　ため息を漏らした。
@ENG:

@IDX:40313
@OFF:0x8649
@SPK:
@JPN:　自分が、あえて言わなかったこと……。
@ENG:

@IDX:40314
@OFF:0x867d
@SPK:
@JPN:　転んだ時に、どうなったのか……。
@ENG:

@IDX:40315
@OFF:0x86ad
@SPK:
@JPN:　何の上に転び、どんな体勢になったのか……。
@ENG:

@IDX:40316
@OFF:0x86e7
@SPK:
@JPN:　ここにいる限り、嫌でもそれを思い出す。
@ENG:

@IDX:40317
@OFF:0x872f
@SPK:
@JPN:　忘れたい……。
@ENG:

@IDX:40318
@OFF:0x874d
@SPK:
@JPN:　死体から視線を逸らすと、もう一度ため息をついて　部屋をあとにした……。
@ENG:

@IDX:40320
@OFF:0x88a7
@SPK:［真魚］
@JPN:　入るよ～。
@ENG:

@IDX:40322
@OFF:0x8998
@SPK:［真魚］
@JPN:　ど、どうしたの、その傷……オデコんトコ、血が出てるよ！？
@ENG:

@IDX:40325
@OFF:0x8a08
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、これ……転んだんだ。
@ENG:

@IDX:40327
@OFF:0x8a67
@SPK:［真魚］
@JPN:　『転んだ』って、顔面だよ？　器用な転び方……。
@ENG:

@IDX:40330
@OFF:0x8acd
@SPK:[\protag]
@JPN:　……大したことはないよ。
@ENG:

@IDX:40332
@OFF:0x8ba4
@SPK:［真魚］
@JPN:　そう？　血は止まってるみたいだけど……痛くないの？
@ENG:

@IDX:40335
@OFF:0x8c0e
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、全然……。
@ENG:

@IDX:40337
@OFF:0x8cd9
@SPK:［真魚］
@JPN:　ふぅん……
@ENG:

@IDX:40338
@OFF:0x8d77
@SPK:
@JPN:あ、ゴメン！　報告書、書くんだよね？　じゃあ、はい、これ。
@ENG:

@IDX:40341
@OFF:0x8de7
@SPK:[\protag]
@JPN:　ありがと……。
@ENG:

@IDX:40342
@OFF:0x8e97
@SPK:
@JPN:　真魚の顔を見た瞬間、ホッとすると同時に作業着の　下がどうなっているかを思い出し、カーッと顔中が　熱くなるのを感じた。
@ENG:

@IDX:40343
@OFF:0x8f1b
@SPK:
@JPN:　だが意識が額の傷に向けられているおかげで、真魚　はそのことには気づいていないようだ。
@ENG:

@IDX:40344
@OFF:0x8f7f
@SPK:
@JPN:　そんな真魚の様子に安堵しつつも、なるべく自然な　動作で書類を受け取った。
@ENG:

@IDX:40345
@OFF:0x8fe5
@SPK:
@JPN:　奇妙な音とにおいのこと……。
@ENG:

@IDX:40346
@OFF:0x9011
@SPK:
@JPN:　部屋の明かりが消えた事実……。
@ENG:

@IDX:40347
@OFF:0x903f
@SPK:
@JPN:　それだけを記載してから、最後にサインを書く。
@ENG:

@IDX:40348
@OFF:0x907b
@SPK:
@JPN:　死体に欲情した事実……。
@ENG:

@IDX:40349
@OFF:0x90a3
@SPK:
@JPN:　明かりが消えた時にどうなったか……。
@ENG:

@IDX:40350
@OFF:0x90d7
@SPK:
@JPN:　それは、報告書には記載しない。
@ENG:

@IDX:40353
@OFF:0x9141
@SPK:[\protag]
@JPN:　……はい、確認して。
@ENG:

@IDX:40355
@OFF:0x9214
@SPK:［真魚］
@JPN:　……変なにおい？　おかしな音？　部屋の明かりが消えた？　……何これ？
@ENG:

@IDX:40358
@OFF:0x9290
@SPK:[\protag]
@JPN:　分からない……分からないから、事実だけ書いた。
@ENG:

@IDX:40360
@OFF:0x9303
@SPK:［真魚］
@JPN:　そう……何だろね？
@ENG:

@IDX:40363
@OFF:0x934d
@SPK:[\protag]
@JPN:　さあな。
@ENG:

@IDX:40365
@OFF:0x9414
@SPK:［真魚］
@JPN:　それで……どんな風に感じた……？
@ENG:

@IDX:40368
@OFF:0x946c
@SPK:[\protag]
@JPN:　どんな風って？
@ENG:

@IDX:40370
@OFF:0x9539
@SPK:［真魚］
@JPN:　あ、やっぱりいいや。
@ENG:

@IDX:40371
@OFF:0x95e5
@SPK:
@JPN:何でもない……。
@ENG:

@IDX:40374
@OFF:0x962b
@SPK:[\protag]
@JPN:　何でもないって……じゃあ、どうして俯くんだ？　昨日もそうだったけど、真魚、ちょっと変だぞ？　奥歯に物が挟まったような聞き方したりして……何かあったのか？
@ENG:

@IDX:40376
@OFF:0x977e
@SPK:［真魚］
@JPN:　何でもないのっ！
@ENG:

@IDX:40379
@OFF:0x97c6
@SPK:[\protag]
@JPN:　な、何だよ、人がせっかく心配して……。
@ENG:

@IDX:40381
@OFF:0x9831
@SPK:［真魚］
@JPN:　心配してくれなんて頼んでないでしょ！　余計なことに首突っ込まないでよ！
@ENG:

@IDX:40384
@OFF:0x98af
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40386
@OFF:0x9978
@SPK:［真魚］
@JPN:　ご、ゴメン……言い過ぎちゃった……。
@ENG:

@IDX:40389
@OFF:0x99d4
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、いいんだ……僕も悪かったよ。真魚が嫌がるようなこと聞いたりして……自分のこともロクにできやしないのに、ホントどうかしてるよな。
@ENG:

@IDX:40391
@OFF:0x9a9d
@SPK:［真魚］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40394
@OFF:0x9adf
@SPK:[\protag]
@JPN:　……真魚？
@ENG:

@IDX:40396
@OFF:0x9b2e
@SPK:［真魚］
@JPN:　……ゴメンね。私、仕事に戻る……。
@ENG:

@IDX:40399
@OFF:0x9b88
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、ああ……そうだ、健康診断は……。
@ENG:

@IDX:40401
@OFF:0x9bf1
@SPK:［真魚］
@JPN:　この間のトコ……副院長先生、もう待ってると思うよ。
@ENG:

@IDX:40404
@OFF:0x9c5b
@SPK:[\protag]
@JPN:　分かった。ありがとな。
@ENG:

@IDX:40406
@OFF:0x9cb6
@SPK:［真魚］
@JPN:　……じゃあね……。
@ENG:

@IDX:40407
@OFF:0x9d1a
@SPK:
@JPN:　真魚の奴、一体どうしたというのだろう？
@ENG:

@IDX:40408
@OFF:0x9d50
@SPK:
@JPN:　ミーティングの最中に、あいつらしくもなく口籠る　ことがある。
@ENG:

@IDX:40409
@OFF:0x9d9c
@SPK:
@JPN:　作業前は、いたって普通なのだが……。
@ENG:

@IDX:40410
@OFF:0x9dd0
@SPK:
@JPN:　僕の書いた報告書に不備でもあったのだろうか？
@ENG:

@IDX:40411
@OFF:0x9e0c
@SPK:
@JPN:　だがそんなことだったら、当事者の僕にはっきりと　言えば済む。
@ENG:

@IDX:40412
@OFF:0x9e68
@SPK:
@JPN:　それとも、仕事のことではなくて、もっと個人的な　ことで悩んでいるのだろうか？
@ENG:

@IDX:40413
@OFF:0x9ec4
@SPK:
@JPN:　もしそうなら力になってあげたいが、真魚にだって　言いたくないことはあるだろう。
@ENG:

@IDX:40414
@OFF:0x9f22
@SPK:
@JPN:　僕が、仕事中に起きたことを隠しているように。
@ENG:

@IDX:40415
@OFF:0x9f6c
@SPK:
@JPN:　……特に、さっきのことは真魚には言えない。
@ENG:

@IDX:40416
@OFF:0x9fa6
@SPK:
@JPN:　作業着を脱ぐと、青臭い栗の花のにおいが更衣室に　充満していく。
@ENG:

@IDX:40417
@OFF:0x9ff4
@SPK:
@JPN:　もし着ていたものがゴム製のツナギでなかったら、　においで気づかれてしまっただろう……。
@ENG:

@IDX:40418
@OFF:0xa05a
@SPK:
@JPN:　或いは染み出した精液のシミで、それと察するかも　しれない。
@ENG:

@IDX:40419
@OFF:0xa0b4
@SPK:
@JPN:　情けない……。
@ENG:

@IDX:40420
@OFF:0xa0d2
@SPK:
@JPN:　ネットリと肌に染みついた精液をペーパータオルで　拭い去り、脱いだ作業着を持ったままシャワー室に　入る。
@ENG:

@IDX:40421
@OFF:0xa148
@SPK:
@JPN:　せめて、水で流すくらいはしておかないと……。
@ENG:

@IDX:40422
@OFF:0xa247
@SPK:
@JPN:　シャワーで念入りに流しはしたが、青臭いにおいが　身体に染みついているような気がして、人目につく　ロビーを足早に抜け、診察室に向かった。
@ENG:

@IDX:40423
@OFF:0xa2dd
@SPK:
@JPN:　今日は外来の休診日……それゆえ、辺りには、時折　迷い込む見舞い客以外、人の姿はまばらだ。
@ENG:

@IDX:40424
@OFF:0xa353
@SPK:
@JPN:　股間がスースーするのと同時に、ズボンの縫い目が　直接陰嚢を擦り、何とも言えない惨めな状態を思い　出させる。
@ENG:

@IDX:40425
@OFF:0xa3cd
@SPK:
@JPN:　いくら何でも、精液の染みついた下着をはく気には　なれなかった。
@ENG:

@IDX:40426
@OFF:0xa41b
@SPK:
@JPN:　とりあえず下着は洗面所で洗い、水気を絞ってから　バッグにしまってある。
@ENG:

@IDX:40427
@OFF:0xa481
@SPK:
@JPN:　運悪く、今日は替えの下着を持ってきていない。
@ENG:

@IDX:40428
@OFF:0xa4bd
@SPK:
@JPN:　仕方なくノーパンのままズボンをはいている。
@ENG:

@IDX:40429
@OFF:0xa4f7
@SPK:
@JPN:　それでも、部屋に帰っている時間はない。
@ENG:

@IDX:40430
@OFF:0xa52d
@SPK:
@JPN:　何とかバレないことを祈りながら、診察室のドアを　ノックした。
@ENG:

@IDX:40433
@OFF:0xa5c3
@SPK:[\protag]
@JPN:　……よろしいでしょうか？
@ENG:

@IDX:40435
@OFF:0xa620
@SPK:［千草］
@JPN:　早く入ってらっしゃい。
@ENG:

@IDX:40438
@OFF:0xa66e
@SPK:[\protag]
@JPN:　失礼します……。
@ENG:

@IDX:40441
@OFF:0xa775
@SPK:[\protag]
@JPN:　申し訳ありません。遅くなりました。
@ENG:

@IDX:40443
@OFF:0xa84e
@SPK:［千草］
@JPN:　気にしないで。それより、その額の傷……どうしたの？
@ENG:

@IDX:40446
@OFF:0xa8b8
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、これですか？　その……ちょっと転んでしまって。
@ENG:

@IDX:40448
@OFF:0xa9a5
@SPK:［千草］
@JPN:　そう……大丈夫なの？
@ENG:

@IDX:40451
@OFF:0xa9f1
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい。もう血も止まっていますし、ちょっと切っただけみたいですから。
@ENG:

@IDX:40453
@OFF:0xaa78
@SPK:［千草］
@JPN:　気をつけなさいね？　頭の怪我は怖いから。もし目眩や吐き気がしたら、すぐに言うのよ？
@ENG:

@IDX:40456
@OFF:0xab02
@SPK:[\protag]
@JPN:　ありがとうございます。
@ENG:

@IDX:40458
@OFF:0xabd3
@SPK:［千草］
@JPN:　フフフ……じゃあ、早速健康診断を始めましょうか？
@ENG:

@IDX:40461
@OFF:0xac3b
@SPK:[\protag]
@JPN:　よろしくお願いします。
@ENG:

@IDX:40462
@OFF:0xacd6
@SPK:
@JPN:　まず最初に採血、それから問診……。
@ENG:

@IDX:40463
@OFF:0xad08
@SPK:
@JPN:　途中にトラブルらしいトラブルもなく、健康診断は　進んでいった。
@ENG:

@IDX:40464
@OFF:0xad56
@SPK:
@JPN:　……ただ二点を除いて。
@ENG:

@IDX:40465
@OFF:0xad8c
@SPK:
@JPN:　一点は、問診の内容。
@ENG:

@IDX:40466
@OFF:0xadb0
@SPK:
@JPN:　一言で言えば、奇妙な問診だった。
@ENG:

@IDX:40467
@OFF:0xade0
@SPK:
@JPN:　確かに、身体の調子や前回の健康診断から変化した　健康状態などについて、事細かに質問された。
@ENG:

@IDX:40468
@OFF:0xae5a
@SPK:
@JPN:　だがその途中で、何度も奇妙な模様の描かれた紙を　見せられ、何に見えるかと質問された。
@ENG:

@IDX:40469
@OFF:0xaebe
@SPK:
@JPN:　確か、ロールシャッハテストだったか？
@ENG:

@IDX:40470
@OFF:0xaef2
@SPK:
@JPN:　サイコサスペンス映画で犯人が受けさせられている　のを見た記憶がある。
@ENG:

@IDX:40471
@OFF:0xaf52
@SPK:
@JPN:　そしてもう一点は……問診が進むにつれ、副院長の　態度が変わっていったこと。
@ENG:

@IDX:40472
@OFF:0xafac
@SPK:
@JPN:　特にロールシャッハテストが繰り返されるにつれて　寡黙になり、最後は不機嫌そうにただ絵を示すだけ　になってしまった。
@ENG:

@IDX:40473
@OFF:0xb02e
@SPK:
@JPN:　当然普通の問診も、設問を告げて答えを聞くだけに　なっていた。
@ENG:

@IDX:40474
@OFF:0xb07a
@SPK:
@JPN:　最初は答えを聞くたびに相槌を打って、コメントを　返したり、雑談を挟んだりしていたのに……。
@ENG:

@IDX:40475
@OFF:0xb1c0
@SPK:
@JPN:　血液検査の結果が戻ってきた今も、副院長の機嫌は　良くなっていない。
@ENG:

@IDX:40476
@OFF:0xb212
@SPK:
@JPN:　カルテと検査科から持ってきた結果用紙を見比べ、　こちらを見ようともしない。
@ENG:

@IDX:40477
@OFF:0xb26c
@SPK:
@JPN:　それほどまでに、結果が悪いのだろうか……。
@ENG:

@IDX:40478
@OFF:0xb2a6
@SPK:
@JPN:　……聞いてみようか？
@ENG:

@IDX:40479
@OFF:0xb2de
@SPK:
@JPN:虎穴に入らずんば虎子を得ず
@ENG:

@IDX:40480
@OFF:0xb2ff
@SPK:
@JPN:君子危うきに近寄らず
@ENG:

@IDX:40481
@OFF:0xb34c
@SPK:
@JPN:　僕自身の健康診断なのだから、不審に思ったことは　聞いてみるのが当然だろう。
@ENG:

@IDX:40482
@OFF:0xb3a6
@SPK:
@JPN:　本当は、不機嫌に黙り込んでいる人間にはうかつに　話しかけない方がいいのだろうが、まあ、『虎穴に　入らずんば虎子を得ず』とも言うし……。
@ENG:

@IDX:40483
@OFF:0xb43c
@SPK:
@JPN:　それに、問診の最中に、医者たる副院長が理不尽に　当たり散らすとも思えない。
@ENG:

@IDX:40484
@OFF:0xb496
@SPK:
@JPN:　軽い感じを装って、どうしたのか聞いてみよう。
@ENG:

@IDX:40487
@OFF:0xb50e
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……。
@ENG:

@IDX:40489
@OFF:0xb5d3
@SPK:［千草］
@JPN:　気の抜けた声を出さないでちょうだい！　なんなの！？
@ENG:

@IDX:40492
@OFF:0xb63d
@SPK:[\protag]
@JPN:　す、すみません！　結果はどうだったのかな……と思って。
@ENG:

@IDX:40494
@OFF:0xb6b8
@SPK:［千草］
@JPN:　うるさいわねぇ……見てて分からないの？　それを調べてるところよ。邪魔しないでちょうだい！
@ENG:

@IDX:40497
@OFF:0xb748
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はい……すみません……。
@ENG:

@IDX:40499
@OFF:0xb823
@SPK:［千草］
@JPN:　まったく……何なのよ、これは……。
@ENG:

@IDX:40500
@OFF:0xb875
@SPK:
@JPN:　……読みが甘かった。
@ENG:

@IDX:40501
@OFF:0xb899
@SPK:
@JPN:　話しかけた僕に向けられたのは、怒声にも近い叱責　だった。
@ENG:

@IDX:40502
@OFF:0xb8e1
@SPK:
@JPN:　続けて、苛立ちを含んだ台詞が副院長の唇から紡ぎ　出される。
@ENG:

@IDX:40503
@OFF:0xb92b
@SPK:
@JPN:　穏和な副院長からは想像もできないほど、鋭い棘を　含んだ声……。
@ENG:

@IDX:40504
@OFF:0xb979
@SPK:
@JPN:　すでに苛立ちを通り越し、激怒していると言っても　過言ではない。
@ENG:

@IDX:40505
@OFF:0xb9d7
@SPK:
@JPN:　何をそんなに怒っているのだろう？
@ENG:

@IDX:40506
@OFF:0xba07
@SPK:
@JPN:　謝ろうにも、何を謝ればいいのか分からない。
@ENG:

@IDX:40507
@OFF:0xba41
@SPK:
@JPN:　いっそここが気に入らないあそこが気に入らないと　言ってくれた方が、遥かにましだ。
@ENG:

@IDX:40509
@OFF:0xbaea
@SPK:［千草］
@JPN:　……結果、出たわよ。
@ENG:

@IDX:40512
@OFF:0xbb36
@SPK:[\protag]
@JPN:　あ、はい……どうでしょうか？
@ENG:

@IDX:40514
@OFF:0xbb97
@SPK:［千草］
@JPN:　問題なし……帰っていいわ。
@ENG:

@IDX:40517
@OFF:0xbbe9
@SPK:[\protag]
@JPN:　あの……それだけですか？
@ENG:

@IDX:40519
@OFF:0xbc46
@SPK:［千草］
@JPN:　私の診断が信じられないなら、それでも結構よ……自腹で別の医者に見てもらったら？
@ENG:

@IDX:40522
@OFF:0xbccc
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ！　信じてないなんて、そんなこと……。
@ENG:

@IDX:40524
@OFF:0xbdb3
@SPK:［千草］
@JPN:　だったら、さっさと帰りなさい！　私は忙しいのよ？　余計なことで時間をとらせないでちょうだい！
@ENG:

@IDX:40527
@OFF:0xbe47
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はい！　失礼しました！
@ENG:

@IDX:40529
@OFF:0xbf19
@SPK:［千草］
@JPN:　ちょっと待って！！
@ENG:

@IDX:40532
@OFF:0xbf63
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい！！
@ENG:

@IDX:40533
@OFF:0xc051
@SPK:
@JPN:　副院長の強い制止の声で立ち止まる。
@ENG:

@IDX:40534
@OFF:0xc083
@SPK:
@JPN:　やっぱり診断結果に何か問題があったのか？
@ENG:

@IDX:40535
@OFF:0xc0bb
@SPK:
@JPN:　でも、問題なしと言われたのに……。
@ENG:

@IDX:40537
@OFF:0xc1aa
@SPK:［千草］
@JPN:　額の傷、消毒しておきなさいよ。
@ENG:

@IDX:40540
@OFF:0xc200
@SPK:[\protag]
@JPN:　へ？
@ENG:

@IDX:40542
@OFF:0xc2bf
@SPK:［千草］
@JPN:　もう！！　あんな場所で怪我なんてしないでちょうだい！
@ENG:

@IDX:40545
@OFF:0xc32b
@SPK:[\protag]
@JPN:　す、すみません。
@ENG:

@IDX:40547
@OFF:0xc380
@SPK:［千草］
@JPN:　分かったらさっさと出てってちょうだい！　いつまでもあなたばかりに構ってられないんだから！
@ENG:

@IDX:40550
@OFF:0xc410
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい！　失礼します！
@ENG:

@IDX:40551
@OFF:0xc503
@SPK:
@JPN:　副院長の怒号に追われるように、慌てて診察室から　飛び出した。
@ENG:

@IDX:40552
@OFF:0xc54f
@SPK:
@JPN:　物が飛んでこなかったのが不思議なくらいだ。
@ENG:

@IDX:40553
@OFF:0xc597
@SPK:
@JPN:　でも、どうして副院長はこの傷が仕事場でついたと　知っているんだ？
@ENG:

@IDX:40554
@OFF:0xc5e7
@SPK:
@JPN:　僕が話したのか？
@ENG:

@IDX:40555
@OFF:0xc607
@SPK:
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40556
@OFF:0xc621
@SPK:
@JPN:　まあいいか。僕の行動範囲なんてたかが知れている　から、そこから推測したんだろう。
@ENG:

@IDX:40557
@OFF:0xc693
@SPK:
@JPN:　それよりも気になるのは副院長の態度だ。
@ENG:

@IDX:40558
@OFF:0xc6c9
@SPK:
@JPN:　何をあんなに怒っていたのだろう？
@ENG:

@IDX:40560
@OFF:0xc744
@SPK:［女の声］
@JPN:　副院長先生、随分怒ってたみたいだね？
@ENG:

@IDX:40563
@OFF:0xc814
@SPK:[\protag]
@JPN:　……真魚？
@ENG:

@IDX:40565
@OFF:0xc863
@SPK:［真魚］
@JPN:　心配だったから、様子を見に来ちゃった。……先生の声、廊下まで響いてたよ。
@ENG:

@IDX:40568
@OFF:0xc8e3
@SPK:[\protag]
@JPN:　心配？　……別に健康診断程度で心配する必要もないだろ。
@ENG:

@IDX:40570
@OFF:0xc95e
@SPK:［真魚］
@JPN:　ううん、そうじゃないよ。副院長先生、なんだか朝から機嫌が悪かったからさ。そういう時って何言っても怒るんだ……それ、忠告してあげるの忘れてたから……。
@ENG:

@IDX:40572
@OFF:0xca37
@SPK:［真魚］
@JPN:　でも、遅かったみたいだね……。更衣室で教えてあげれば、怒られなかったのに……。
@ENG:

@IDX:40575
@OFF:0xcabd
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、いいんだ……怒られるのは慣れてるからね。
@ENG:

@IDX:40576
@OFF:0xcbac
@SPK:
@JPN:　何を怒っているのかは知らないが、不機嫌な相手に　余計なことを言うほど愚かなことはない。
@ENG:

@IDX:40577
@OFF:0xcc12
@SPK:
@JPN:　『君子危うきに近寄らず』だ……。
@ENG:

@IDX:40578
@OFF:0xcc42
@SPK:
@JPN:　ただ黙って結果を待つ。
@ENG:

@IDX:40581
@OFF:0xcca4
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40583
@OFF:0xccf3
@SPK:［千草］
@JPN:　……まったく、なんなのこれは……。
@ENG:

@IDX:40586
@OFF:0xcd4d
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40588
@OFF:0xcd9c
@SPK:［千草］
@JPN:　……こんなデータ、使いものにならないわ……。
@ENG:

@IDX:40591
@OFF:0xce00
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40593
@OFF:0xce4f
@SPK:［千草］
@JPN:　実験失敗……彼に顔向けができない……。
@ENG:

@IDX:40596
@OFF:0xcead
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40598
@OFF:0xcefc
@SPK:［千草］
@JPN:　……薬の調合を変えようかしら……。
@ENG:

@IDX:40601
@OFF:0xcf56
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40603
@OFF:0xcfa5
@SPK:［千草］
@JPN:　それとも…………。
@ENG:

@IDX:40606
@OFF:0xcfef
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40608
@OFF:0xd03e
@SPK:［千草］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40609
@OFF:0xd07a
@SPK:
@JPN:　痛いほどの緊張を伴った時間……。
@ENG:

@IDX:40610
@OFF:0xd0aa
@SPK:
@JPN:　時折聞こえてくる副院長の呟きを、僕は黙ったまま　聞き流す。
@ENG:

@IDX:40611
@OFF:0xd0f4
@SPK:
@JPN:　水銀のように重苦しく流れていく時間……。
@ENG:

@IDX:40612
@OFF:0xd12c
@SPK:
@JPN:　副院長の指先でペンがくるくると回り、突然それが　ピタリと止まった。
@ENG:

@IDX:40614
@OFF:0xd23b
@SPK:［千草］
@JPN:　……どこにも問題はないわね。
@ENG:

@IDX:40617
@OFF:0xd28f
@SPK:[\protag]
@JPN:　は、はい……。
@ENG:

@IDX:40619
@OFF:0xd36a
@SPK:［千草］
@JPN:　どうしたの？　そんなに緊張して……。
@ENG:

@IDX:40622
@OFF:0xd3c6
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ、その……副院長が、不機嫌そうだったから……。
@ENG:

@IDX:40624
@OFF:0xd43d
@SPK:［千草］
@JPN:　不機嫌？　……ああ、考え事してる時はあんなものよ。
@ENG:

@IDX:40627
@OFF:0xd4a7
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうなんですか？
@ENG:

@IDX:40629
@OFF:0xd572
@SPK:［千草］
@JPN:　そうよ。それだけ健康診断を真剣にしてたってことでしょ……じゃあ、もう帰ってもいいわよ。
@ENG:

@IDX:40632
@OFF:0xd600
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……あの、一つだけ聞いてもいいですか？
@ENG:

@IDX:40634
@OFF:0xd66f
@SPK:［千草］
@JPN:　なに？
@ENG:

@IDX:40637
@OFF:0xd6ad
@SPK:[\protag]
@JPN:　データとか実験とか……何のことでしょうか？
@ENG:

@IDX:40639
@OFF:0xd796
@SPK:［千草］
@JPN:　は？　何の話？
@ENG:

@IDX:40642
@OFF:0xd7dc
@SPK:[\protag]
@JPN:　いえ……副院長がさっき独り言で……。
@ENG:

@IDX:40644
@OFF:0xd8bb
@SPK:［千草］
@JPN:　……ああ、あれね。あなたのことじゃないの。今、手懸けてる共同研究のこと。
@ENG:

@IDX:40647
@OFF:0xd93b
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうだったんですか。
@ENG:

@IDX:40649
@OFF:0xd994
@SPK:［千草］
@JPN:　今ちょっと論文の執筆にてこずってて……頭から離れないの。健康診断の最中なのに……ごめんなさい、心配させてしまって。我ながら、配慮が足りなかったわね。
@ENG:

@IDX:40652
@OFF:0xda60
@SPK:[\protag]
@JPN:　いいえ、そんな……。こちらこそ、忙しいところ僕なんかの健康診断に時間を割いていただいて……ありがとうございました。
@ENG:

@IDX:40654
@OFF:0xdb17
@SPK:［千草］
@JPN:　そんなことないわ。お仕事、頑張ってくれてるんだから、これくらい当然でしょ？　診断結果にも問題はなかったし、これからも身体に気をつけて頑張ってちょうだい。
@ENG:

@IDX:40657
@OFF:0xdbe7
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい……では、失礼します。
@ENG:

@IDX:40659
@OFF:0xdcbc
@SPK:［千草］
@JPN:　あ、ちょっと待って。
@ENG:

@IDX:40662
@OFF:0xdd08
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい？
@ENG:

@IDX:40664
@OFF:0xdd53
@SPK:［千草］
@JPN:　額の傷、ちゃんと消毒しておくのよ。壁に頭を打ちつけるなんてどうかしてるわ。
@ENG:

@IDX:40667
@OFF:0xddd5
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうですね……。
@ENG:

@IDX:40669
@OFF:0xde2a
@SPK:［千草］
@JPN:　もうあんな馬鹿なことしないのよ。
@ENG:

@IDX:40672
@OFF:0xde82
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、すみませんでした。ちょっとパニくっちゃって……自分でもよく分からなくなっちゃったんです。
@ENG:

@IDX:40674
@OFF:0xdf25
@SPK:［千草］
@JPN:　謝らなくていいのよ、気をつけてくれれば。それじゃあ、もう行っていいわ。
@ENG:

@IDX:40677
@OFF:0xdfa3
@SPK:[\protag]
@JPN:　はい、ご心配かけてすみませんでした。
@ENG:

@IDX:40678
@OFF:0xe0a4
@SPK:
@JPN:　穏やかな表情を見せた副院長に見送られ、診察室を　あとにした。
@ENG:

@IDX:40679
@OFF:0xe0f0
@SPK:
@JPN:　やはり、余計なことを言わなくて正解だった。
@ENG:

@IDX:40680
@OFF:0xe12a
@SPK:
@JPN:　額の傷の心配までしてくれて……。
@ENG:

@IDX:40681
@OFF:0xe168
@SPK:
@JPN:　……心配してくれて？
@ENG:

@IDX:40682
@OFF:0xe18c
@SPK:
@JPN:　どうして副院長は、この傷が壁に頭を打ちつけた時　にできたものだと知っているのだろう……？
@ENG:

@IDX:40683
@OFF:0xe1f4
@SPK:
@JPN:　この傷のことを、僕は副院長に言っただろうか？
@ENG:

@IDX:40684
@OFF:0xe230
@SPK:
@JPN:　言ったような、言っていないような……。
@ENG:

@IDX:40685
@OFF:0xe266
@SPK:
@JPN:　緊張していたせいか、はっきりとは思い出せない。　
@ENG:

@IDX:40686
@OFF:0xe2b6
@SPK:
@JPN:　だが、副院長が知っていたということは、おそらく　僕自身が教えたのだ。
@ENG:

@IDX:40687
@OFF:0xe30a
@SPK:
@JPN:　そうとでも考えないと説明がつかない。
@ENG:

@IDX:40688
@OFF:0xe33e
@SPK:
@JPN:　確信できるだけの記憶はないが、元々人の記憶など　そんなものだろう。
@ENG:

@IDX:40689
@OFF:0xe3a0
@SPK:
@JPN:　それよりも副院長の不機嫌の原因が僕ではなかった　ことの方が重要だ。
@ENG:

@IDX:40690
@OFF:0xe3f2
@SPK:
@JPN:　彼女の庇護なしには、僕はこの病院で働けない。
@ENG:

@IDX:40691
@OFF:0xe42e
@SPK:
@JPN:　ほっと胸を撫で下ろし、安堵の息をついた。
@ENG:

@IDX:40694
@OFF:0xe512
@SPK:[\protag]
@JPN:　……真魚？
@ENG:

@IDX:40696
@OFF:0xe5df
@SPK:［真魚］
@JPN:　あ、もう終わったんだ……。
@ENG:

@IDX:40699
@OFF:0xe631
@SPK:[\protag]
@JPN:　どうしたんだ、こんなところに来て……僕に何か用か？
@ENG:

@IDX:40701
@OFF:0xe71e
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん。まあ、そんなトコ。ねえ、随分静かだったけど、大丈夫だったの？
@ENG:

@IDX:40704
@OFF:0xe798
@SPK:[\protag]
@JPN:　ああ、健康診断では、どこも異常ないってさ。
@ENG:

@IDX:40706
@OFF:0xe807
@SPK:［真魚］
@JPN:　そうじゃなくて……副院長先生。
@ENG:

@IDX:40709
@OFF:0xe85d
@SPK:[\protag]
@JPN:　……？　副院長がどうかしたか？
@ENG:

@IDX:40711
@OFF:0xe93a
@SPK:［真魚］
@JPN:　……なんか、怒ってなかった？
@ENG:

@IDX:40714
@OFF:0xe98e
@SPK:[\protag]
@JPN:　いや、そんなことはないぞ？
@ENG:

@IDX:40716
@OFF:0xea63
@SPK:［真魚］
@JPN:　そっか、良かった……副院長先生、朝会った時、なんか不機嫌だったからちょっと心配してたんだ。
@ENG:

@IDX:40719
@OFF:0xeaf5
@SPK:[\protag]
@JPN:　それでわざわざ？
@ENG:

@IDX:40721
@OFF:0xebc0
@SPK:［真魚］
@JPN:　うん。ナースステーションに戻ってから、言っておけばよかったって思ってさ……でも、何もなくて良かった。
@ENG:

@IDX:40722
@OFF:0xec6d
@SPK:
@JPN:　僕のことを心配して、ここまで来てくれた……。
@ENG:

@IDX:40723
@OFF:0xeca9
@SPK:
@JPN:　その気持ちはとても嬉しいが、僕には真魚の様子の　方が遥かに心配だ。
@ENG:

@IDX:40724
@OFF:0xecfb
@SPK:
@JPN:　更衣室でもそうだったが視線を足下に向けたまま、　まるで元気がない。
@ENG:

@IDX:40725
@OFF:0xed5d
@SPK:
@JPN:　これでもし相手が真魚でなければ、ここまで心配は　しない。
@ENG:

@IDX:40726
@OFF:0xeda5
@SPK:
@JPN:　普段は元気な彼女だからこそ、とんでもないことが　あったのではないかと思えてしまう。
@ENG:

@IDX:40727
@OFF:0xee1c
@SPK:
@JPN:　僕のことを心配してくれる真魚の気持ちは、素直に　嬉しいと思う。
@ENG:

@IDX:40728
@OFF:0xee6a
@SPK:
@JPN:　ただ、まるで自分のことのようにホッとした表情を　見せる真魚のその笑顔の中に、幾分かの不自然さを　感じ取ってしまう。
@ENG:

@IDX:40729
@OFF:0xeefc
@SPK:
@JPN:　先程のミーティングでの様子……。
@ENG:

@IDX:40730
@OFF:0xef2c
@SPK:
@JPN:　僕から逃げるように更衣室を出ていった真魚。
@ENG:

@IDX:40731
@OFF:0xef66
@SPK:
@JPN:　あんな真魚らしからぬ姿を見せられた今の僕には、　彼女の笑みが、無理に感情を隠そうと張りつかせた　痛々しいものに思えてならない。
@ENG:

@IDX:40734
@OFF:0xf030
@SPK:[\protag]
@JPN:　なあ、真魚……。
@ENG:

@IDX:40736
@OFF:0xf0fb
@SPK:［真魚］
@JPN:　ン……なに？
@ENG:

@IDX:40739
@OFF:0xf13f
@SPK:[\protag]
@JPN:　更衣室で聞いたこと、もう一度聞いてもいいか？
@ENG:

@IDX:40741
@OFF:0xf22a
@SPK:［真魚］
@JPN:　……ゴメン……答えらんないよ……。
@ENG:

@IDX:40744
@OFF:0xf284
@SPK:[\protag]
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40746
@OFF:0xf2d3
@SPK:［真魚］
@JPN:　…………。
@ENG:

@IDX:40749
@OFF:0xf315
@SPK:[\protag]
@JPN:　……誰にも言わないって約束しても、無駄なんだろうな……。
@ENG:

@IDX:40751
@OFF:0xf392
@SPK:［真魚］
@JPN:　……うん。
@ENG:

@IDX:40754
@OFF:0xf3d4
@SPK:[\protag]
@JPN:　そうか……じゃあ、聞かないよ。相談したくなったら、いつでも呼んでくれ。
@ENG:

@IDX:40756
@OFF:0xf45f
@SPK:［真魚］
@JPN:　ン……ありがと。それと……ゴメンね。
@ENG:

@IDX:40759
@OFF:0xf4bb
@SPK:[\protag]
@JPN:　気にしないでいいよ……答えてもらえないのは、覚悟してたからさ。
@ENG:

@IDX:40762
@OFF:0xf531
@SPK:[\protag]
@JPN:　よし！　じゃあ湿っぽい話はヤメ！　真魚はこれから昼飯か？
@ENG:

@IDX:40764
@OFF:0xf5ae
@SPK:［真魚］
@JPN:　ううん……食欲ないから、ナースステーションに戻る。
@ENG:

@IDX:40767
@OFF:0xf618
@SPK:[\protag]
@JPN:　そっか、一緒に昼飯でもと思ったんだけどな……じゃあ一人で食ってくか……あ、そうそう、真魚！
@ENG:

@IDX:40769
@OFF:0xf6b7
@SPK:［真魚］
@JPN:　……何？
@ENG:

@IDX:40772
@OFF:0xf6f7
@SPK:[\protag]
@JPN:　お前、笑ってる方がいいぞ。その方が可愛い。
@ENG:

@IDX:40778
@OFF:0xf9a6
@SPK:［真魚］
@JPN:バカ……。
@ENG:

@IDX:40781
@OFF:0xf9e6
@SPK:[\protag]
@JPN:　え？
@ENG:

@IDX:40783
@OFF:0xfaa5
@SPK:［真魚］
@JPN:　じゃあね。
@ENG:

@IDX:40784
@OFF:0xfafc
@SPK:
@JPN:　真魚は、極上の笑みを浮かべて去っていった。
@ENG:

@IDX:40785
@OFF:0xfb4b
@SPK:
@JPN:　真魚は、今度こそ彼女本来の明るい笑みを浮かべて　戻っていった。
@ENG:

@IDX:40786
@OFF:0xfb99
@SPK:
@JPN:　良かった……僕の言葉で真魚を元気づけられた。
@ENG:

@IDX:40787
@OFF:0xfbd5
@SPK:
@JPN:　少しくさいかなとも思ったが、真魚にはあれくらい　で充分だろう。
@ENG:

@IDX:40788
@OFF:0xfc35
@SPK:
@JPN:　なんとなく胸の中に温かいものを感じながら、僕も　その場をあとにした。
@ENG:

